
表面張力は、コップの水など日常生活にありふれた現象として目の当たりにしています。
しかし、表面張力は境目を定義するための力でありエネルギーで、
ひいては生命活動を説明するためにも活用されるものです。
界面を考える上で基本となるもの
表面張力について、下記文献を参考に解説したい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/47/9/47_KJ00003521008/_pdf
表面張力は、N/mの単位を持っており、物体表面にひもを付けて引っ張るイメージです。文献にもある通り、ここに面積の単位であるm^2を分母と分子にかけてやると、
Nm^2/m^3となり、力の単位Nに長さmをかけるとエネルギーJの単位になることから最終的にJ/m^2となって、表面張力は単位面積あたりのエネルギーとなります。
この単位面積当たりのエネルギーというのが、界面を作る&維持するために必要なエネルギーで、液体内部を構成するよりも過剰に必要となることから、
過剰な自由エネルギーと言えます。表面“張力”と言いますが、中身は界面が存在するためのエネルギーということになります。
“表面”張力は、固体と気体や液体と気体のように片方が気体の時に用いられ、それらも含めて一般的には“界面”張力と言います。
例えば、水の表面張力は72mN(ミリニュートン)/mで、エタノールなど異物が加わると値は小さくなります。これは、水と空気の界面に水分子以外のエタノール分子
が入り込むことで水分子間の水素結合が弱まるためだとされており、強い相互作用である水分子間の水素結合力が低下することで界面を引っ張る力が弱まり、結果
として界面張力の低下を生んでいるというものです。同じような原理で、石ケンのような界面活性剤が含まれると、大幅に水の表面張力は低下します。これも、
水分子同士の水素結合を邪魔する存在となるためです。
界面活性剤で水の表面張力が下がる原因は、界面活性剤が水と空気の界面に吸着し、さらに進んで水分子に代わって界面を形成していくことが原因です。
界面活性剤分子は水分子のような強い水素結合を形成できないため、界面を維持する力が弱く、結果として界面張力が下がることになります。
石ケン水が泡立つのは、界面活性分子が水と空気の界面だけではなく水中に豊富に存在する状態であった場合、空気を取り囲んで球状の泡を形成するためです。
(参考資料)
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/69/4/69_158/_pdf
昔は、カルシウムなど2価の陽イオンを含む硬水では石ケンが機能しづらく、汚れが落ちにくいことがありました。これは、界面活性分子の多くは末端がスルホン基
など負電荷を持っていて、正電荷を帯びる陽イオンと結合しやすく、結合すると水に馴染み易い電荷をもった部分を失うため、水に溶けにくくなり凝集するためです。
今の合成洗剤はこうした現象が起こらないように設計されています。
同じように、細胞膜も界面活性な物質が2重に並んだ構造をしており、膜の内側も外側も水になじむようにできています。
この界面活性分子が2重に並んだ脂質二重膜の界面張力によって細胞は守られています。膜による隔たりが細胞同士を独立させ、
内部の成分を外部に漏出させず機能を維持しています。物理的に見ると、それは界面張力として考えることができると思っています。
ありふれた物性値ですが、生き物と熱力学を結びつけるひとつの架け橋だと思います。
河野拝