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PFAS問題と分析化学


世間では、有機フッ素系化合物(PFAS)が問題となっています。
有機フッ素系化合物ではテ フロンが有名で、フライパンなど広く使われています。
これらが安定すぎて自然界で分解 されず、永遠に残り続けるということが問題になっています。
また、体内でも分解されず 、様々な疾患の原因になるのではという指摘がされています。

この問題について、私のよ うに40代後半以降の世代は“ダイオキシン”という単語で似たような社会現象を思い起こ されるのではないかと思います。
ダイオキシンは有機塩素系化合物で、化学的性質はPFAS 同様に安定で環境中に長期保存されてしまい、動植物の生態に影響すると指摘されました 。
これを契機に、各地のごみ焼却施設は焼却温度を高温化してダイオキシンが分解される 温度まで焼くということで一応の決着を見たと考えています。
こうした施設をPFASはすり 抜けて環境に出ていく、つまり焼却を伴わずに環境中に放出されてしまう使用環境がある ということになり、多くは水に分散して環境に放出されているようです。
そのため、一部 飲料水にも混入していたという報道もありますが、一方でPFASの分析には少々困ったこと があります。

それは、広く使われ過ぎてそこら中に存在し、測定前処理で混入してしまう という問題です。
分析するには、PFAS分析専用の部屋が必要になるほど繊細な作業が求め られるだろうと思います。

これを執筆した2024年12月29日現在、専門家により様々な検討 が進んでおり、2025年には規制がはじまるとされています。
規制がはじまると測定しなけ ればならないサンプルが大量に現れるため、これを処理する機関の数が足りないのではな いかと思っております。
分析化学者は、実務としてこうした社会の要請に応えて測定を行 いつつ、より簡便な測定方法を研究していかなければならないと思います。
計量法で定める測定値の保証も重要な仕事になると思います。
この測定値の保証がしっかりできること は、国力としても重要なパラメータだと思っています。

検査体制の維持は、どの検査機関 に出しても安定して信頼できる分析値が得られるという重要な社会インフラなのです。
その意味で、分析化学という学問は永久に社会から必要とされる分野だと思っています。
ただ、化学分析は社会不安が生じた際にクローズアップされる存在ですから、縁の下の力 持ちよろしく、普段の生活で意識されないことが国民の安心安全が維持されているという ことであって、そこにプライドを持って若い世代にこの分野に携わってほしいと願うばか りです。

河野拝

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河野誠

株式会社カワノラボ代表取締役、博士(理学)。大阪大学理学研究科化学専攻を修了、専門は分析化学。 従来技術と新規分析法の開発で、製造業の生産性向上や研究開発を促進し、人口減少社会でも競争力ある日本のためベンチャーを創業。